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文学少女とおやつを食べる石像

おはようございます。葛です。固めSS新作です。

文学少女シリーズから、天野遠子先輩の石化です。
シリーズを読み始めた頃からこのネタで書きたかったんですが、本編の内容や遠子さん達に凄く感情移入してしまってしばらくは書けませんでした。凄く重い話ですが、最後まで読んでよかったです。大好きです遠子さん。また外伝はこれから読んでいきます。

そんなわけで、石化好きの方のみ、続きからSSをどうぞ。




今日も僕、井上心葉は遠子先輩の「おやつ」を書いている。
ここ文芸部ではありふれた光景ながら、未だにちょっと信じ難いことではあるけれど、文芸部の先輩天野遠子という人は物語や文章を「食べる」のである。しかもその文章を美味しいといって味わうのだから、まるで妖怪みたいな人だ。けれど、本人にそういうとむすっとむくれて「私は妖怪じゃありません。古今東西全ての物語を愛する文学少女です!」と言うのが常だった。逆に普通の食べ物を食べても僕たちと同じように味を感じる事はないらしく、色々な苦労もあったらしい。が、普段のあっけらかんとした雰囲気からそういった面はあまり感じられない。

「心葉くーん。おやつー。まだー?」
まるで子供みたいに遠子先輩がお腹すいたという顔で僕を催促する。実際の所、胸なんかは本当にぺったんこで、すらりとした美少女とも言えるけれど、やっぱり子供っぽいと思う事はよくある。窓から吹き込む風で長く長く結んだ二本の三つ編みがゆらゆらゆれていた。
「あとちょっと待ってください。もう書き終わりますから」
「本当!?嬉しい。今日のお題はお姫様、お城にファンタジーよね。素敵なあまーい王道恋物語が食べたいな」
遠子先輩に書くおやつはいつも三題噺でお題を出されたものを手書きで物語にして渡している。先輩は基本ロマンチックなお話が好きで食べる時も甘いと言って食べてくれる…けれど、時々物語をいじって悪戯してみたくなることがある。特に「おやつ」の頻度が妙に増え始めた時などはなおさらだった。そんな時に書く話は、恋物語かと思いきや怪物が突如現れて戦う話になったりすることもある。そんなときでも遠子先輩は辛いとかしょっぱいとか言いつつもなんだかんだ食べてくれる。そして今日の話は…

「はい、できましたよ。お姫様、お城、ファンタジー」
「ありがとう心葉くん!それじゃあ早速頂きます!」
そう言うと遠子先輩はむしゃむしゃと僕の書いた原稿用紙を食べ始めた。
「うんうん、中世の由緒正しいお城に住む可愛らしいお姫様が親友のメイドさんと友情を育んでいるのね。もぎたてのりんごを丸かじりしたみたいにさわやかで、とってもおいしいわ!なになに、新しくメイドの教育係に来た人が意地悪なお姉さんで…実はメデューサの化けた姿ですって!?ああっお姫様とメイドさんが石に!石になっちゃったわ心葉くん!」
そう言って突如悲劇に直行しようとしている物語を食べて悲しみに浸る遠子先輩。しかしなにやら今日は様子が変だった。
「どうしよう心葉くん…何だか私も…石になってるみたい…」
信じられない光景がそこにあった。遠子先輩の細い足先からぺったんこの胸に至るまで、カチンカチンと音を立てながらどんどん石に染まっていた。ありえない。そう思いたかったが、物語を「食べてしまう」不思議な事が起こる遠子先輩のことだった。もしかしたら、物語に合わせて石化してしまうといいうこともあるのかもしれない。迂闊だった。
「遠子先輩…!ごめんなさい!僕は…」
「ううん…心葉くんのせいじゃないわ…でも…二人を…助けて…あげ…」
遠子先輩の柔らかな唇が灰色に染まる。その目も、頬も、長く垂らした二本の三つ編みも、全て石の塊と化した。わずかに開いた口から言葉を紡ぎ合わせようとしていた様子が伺えるが、二人を助けてとはどういうことだろう。むしろ助けなければいけないのは遠子先輩の方ではないのか。遠子先輩の手から、食べかけの原稿用紙が零れ落ちる。教室の机に腰かけた遠子先輩の石像は、いつものように長いスカートの制服で、いつもの様におやつを食べていたはずなのに、とても寂しそうな顔をして石になっていた。


僕が呆然と石化した遠子先輩を見ていると、いきなり部室に姫倉麻貴先輩が乱入してきた。
「遠子!いる?いないの?今日こそ私のモデルになってもらいにきたわ!いないのね…あら井上君、遠子は?」
遠子先輩は依然麻貴先輩に情報提供してもらった借りがあった。それ以来事あるごとに麻貴先輩に自分の絵のヌードモデルになれと、本気なのか冗談なのかわからないまま迫られていた。
しかしまさかここにある石像が遠子先輩などと言えるはずもなく逡巡していると
「あぁ!この石像!遠子を彫ったものね!この細い手足、全く成長していない胸!余裕ありそうで内心気弱なこの表情!どこをとっても完璧だわ!これ、誰が作ったものだかわかる?」
「いや…それは…」
「私より先に遠子を作るなんて、妬ましいわ。ここにあるってことはどうせ遠子自身が持ってきたものなんでしょう?ちょっとこれ、借りていくわね」
「あ、ちょっと!」
「大丈夫…乱暴に扱ったりしないから…よっ…ちっちゃいからそんなでもないかと思ったけど…やっぱり石像って重いのね…それじゃあ、夜までには返すから遠子にもよろしく伝えておいて」
その遠子先輩が今抱えているそれです、と喉まで出かかった言葉を飲み込む。そんなに居たら学校が閉まってしまうのではと思ったが、麻貴先輩の人脈なら下校時間を大幅に伸ばすくらいわけないのかもしれない。麻貴先輩はそのまま石化した遠子先輩を抱えて消えてしまった。
「…どうしよう」
途方に暮れそうになったが、遠子先輩が石化する直前にくれたヒントを思い出す。そうだ、夜ともなればもうおやつで足りる時間ではない。今から夕食を書いておかないと。


その後8時くらいまで部室で待っていると、台車に遠子先輩の石像を乗せて麻貴先輩が戻ってきた。
「良かったわよこれ、際どい所まで見えそうで見えない辺り、考えられて作られているわね。私に譲ってくれないかしら」
「絶対にダメです」
「あら、意外とこわいのね。いいわ、今日は退散よ。遠子にもよろしく」
そう言って麻貴先輩が去って行ったのを確認した後、改めて石化した遠子先輩に向き直る。
「ごめんなさい。遅くなっちゃいましたけど、今日の晩御飯です」
さっき書いた原稿用紙を、遠子先輩の小さな口に押し込む。なんだか乱暴しているみたいで嫌だったが、今は他に方法が思いつかない。すると、遠子先輩の灰色に染まった全身が少しずつ鮮やかな色を取り戻していった。
「ん、んーー」
「遠子先輩!大丈夫ですか!」
「おいしい…石化したお姫様たちを助けに、騎士がやって来たわ…メデューサは退散して、二人にかかった石の呪いも解けたのね…ありがとう…」
遠子先輩は石化から元に戻ると早速今書いた物語の品評を始めていた。そのいつも通りの光景に思わずくすりと笑ってしまった。
「心葉くんひどい…すっごくお腹がすいたのよ…?麻貴はいろんな角度から私の絵を描くし、転がして…恥ずかしい所から見ようとしたし…何よりおやつの途中だったんですもの…」
「ごめんなさい…遠子先輩のヒントがなかったら、今頃どうなっていたか…」
「うん、でもいいの!とってもおいしい晩御飯が食べられたし、今はすごく幸せだわ!それに…」
「それに?」
「石になるのはこわかったけど、あのお話と元に戻るお話は…とってもおいしかったから…またこんな感じのものも食べたいなって…」
「ええ!?」
まさかの告白だった。


それから
「心葉くーん。おやつー!」
「はいはい。女学生、お好み焼きに石化ですね…本当にいいんですか?」
「いいのいいの!心葉くんを信じてるから」
そう言われてしまうと、元に戻す時の話も頑張って書かないとと思いつつ、今日のおやつを渡す。
「ああっ!初めて東京から大阪に出てきたちょっと気弱な女学生が偶然出会ったお姉さんにお好み焼きをご馳走してもらったのね!おいしい!けど実はこのお好み焼きに石になる薬が入っていて…!?はう!?」
かちーん…
遠子先輩はおやつを食べ終わると同時にまたしても石化していた。今度はとても美味しそうに顔をほころばせつつ、かつ石化する時の驚きの目で石像となっていた。
さて、元に戻すお話を書こうと思ったところで
「あ、しまった!」
口がほとんど閉じてる!もしかして、元に戻せない…!?そんな…!?
「でも、少しだけ口の端から詰め込めそう…」
もしそれでも無理だったら鼻の穴からでも、と考えた。流石にそれは可愛そうなので、できるだけやめておきたい。
とりあえずその問題は後で考える事にして、僕は石になった女学生に身体が元に戻る魔法のジュースを飲ませる話を書き始めた。
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葛

Author:葛
石化や凍結等を扱った固めSSを書いて投稿しています。
月姫リメイクとFLOWERS秋篇が今の生きる希望です。
琥珀さんとエイラ・イルマタル・ユーティライネンを石化する事にかけては誰にも負けません。

固め以外にもアニメとゲームと映画とクラシックなどが好きです。
装甲悪鬼村正 二〇〇九年一〇月三〇日、喜劇の幕が上がる。
折角だから装甲悪鬼村正をやりましょう。

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