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[C36]

素晴らしいお話は最高ですね
  • 2015-05-24
  • 投稿者 : NAKATA
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【FLOWERS夏篇】土の下のカトブレパス

FLOWERS夏篇の八重垣えりかと考崎千鳥を化石化しました。
本編終了後を想定しているので、バッドエンドやネタバレ要素が苦手な方は読まないで下さい。

flowers2_banner_erik6.jpg
八重垣えりか(声:佐倉綾音)

flowers2_banner_chid6.jpg
考崎千鳥(声:洲崎綾)
かわいい。

FLOWERSは春篇から続く連作物の百合系ミステリィADVなので、興味のある方は是非公式サイトの体験版からプレイしてみて下さい。
尚、夏篇のHPには春篇のモロネタバレが含まれるので、注意して下さい。
FLOWERS春篇 公式サイト

ご理解頂いた方だけ、続きからどうぞ。





私の脚は動かない。生まれつきだ。八重垣えりかは車椅子と他人の介助がなければ暮らしていけない障碍者だ。厄介者扱いされる事にはなれていたし、事実私はひねくれた小娘以外の何者でもなかった。この聖アングレカム学院、森と高い壁に囲まれた閉じられた女の園に入学したのも、そういった事情が大いに関係している。
ただ、この学院に入って得る物は思いのほか多かった。白羽蘇芳という信頼できる書痴仲間を得られたし、シスターで私の介助者でもあったバスキア教諭は慈愛の心に満ちた本当に尊敬できる人だ。そして何より……。
「どうしたのえりか。随分ぼうっとしているのね」
「ん、ああ。暑さにでもやられたかな」
「大丈夫なの?すぐに氷枕を持ってくるわね」
「いいよ、それより車椅子を日陰に移動させてくれないか」
「そうね。気づかない私が悪かったわ。ごめんなさい」
「いいんだ。ありがとう、千鳥」
考崎千鳥。この夏から私と同室で生活するアミティエとなった少女だ。元々芸能の仕事をしていただけあって、容姿は思わず見惚れる程整っていたし、透き通る歌声は私の心に深く響いた。発育だって、同じ年の筈の私の大草原の小さな家と比べてしまうと絶望的な差を感じてしまう。
『アミティエ』とはこの学院特有の制度で、選考試験を通じて選ばれた2人か3人の者同士が同じ部屋で暮らし、疑似的な友人生活を入学の段階で組ませられるものだ。
諸事情あってずっと一人部屋で暮らしていた私は、そんな煩わしい制度なんて御免だと思っていたが、千鳥は夏に突如転校してきて、そして、私のアミティエになった。
「初めはこうして二人だけで外に出るなんて考えられなかったわよね」
「そうだな…お前はまるで今にも噛みつきそうな猫みたいなやつだったよ。こいつとアミティエだなんて、絶対に上手くいきっこないって思ったさ」
「私だってそうよ。なんて失礼な子なんだろうって」
「千鳥に言われちゃあおしまいだな」
「それに、猫だったらえりかの方じゃない」
「お前は良いよな。まっすぐ綺麗な髪でさ」
「あら、私はえりかの癖っ毛もかわいくて好きよ」
「……そうかい」
たった数か月、夏を共に過ごすうちに私たちの関係は随分と進展した。常に他人と距離を置いてきた今までの私からは考えられなかったことだ。
幾つかの困難を共に乗り越えた。千鳥が何よりも情熱を注ぐバレエの発表会を間近で観る事ができた。今では、車椅子や入浴の介助も千鳥がやってくれている。
「……本当にありがとうな、千鳥」
「え、何て言ったの?」
「…………何でもない」
「私も感謝してるわ、えりか」
私だけじゃない。千鳥も随分変わった。苛つく事に苛ついている様な目をしていた転校当初の冷たさは今では感じる事は無い。私も千鳥を信頼しているし、千鳥も私を信頼してくれている。ひょっとすると、これは友情ではないのかもしれない。成程、アミティエとはよく言った物だと思った。


日差しを避けて木陰で涼んでいた私たちの頭上に、急に黒い影が広がり始めた。
「雨だわ……」
「勘弁してくれよ、私には雨の中傘も差さずに踊る趣味は無いんだ」
「ばかなこと言ってないで、早く学院寮へ戻りましょう」
徐々に強くなっていく雨。森の中車椅子を押してくれる千鳥。
しかし、それから私たちが聖アングレカム学院に戻る事は無かったのだ。



痛い、と感じたのはいつ以来だろう。体中が重く、骨の軋む感覚がある。運動もできない身体だ。こうして痛みを感じる怪我をすることも長らく無かった。視界がぼやけている。ここは、どこだ。何があった。打ち付ける雨は酷く冷たく、私の尻の下には車椅子の座席は無く、濡れた草が背中を冷やす感覚がじわじわと身体を蝕んで、傍らには、気を失って、足が、ありえない方向に曲がっている相棒が
「千鳥!!!」
落ちたんだ。私たちは森の中で道に迷い、崖の縁にいる事にも気が付かなかったんだ。車椅子の私が頭から落下するのを庇って、千鳥が下敷きになっていた。
「おい、しっかりしてくれよ!千鳥!」
2メートル程先で車輪がひしゃげた車椅子には目もくれず、私は千鳥を呼び続けた。
「…えりか?よかった、大丈夫なのね…いたっ!」
「お前、足が……」
千鳥の曲がった足からは血が流れ続けていた。
「これじゃあ、もう踊れないわね」
「バレエは千鳥の大事な夢じゃないか!冗談でもそんな事言うんじゃない!」
私は自分のスカートを破ると、包帯代わりに千鳥の足に乱暴に巻き付けた。せめて血止めくらいにはなるだろう。
「いいのよ。最後にえりかに観て貰えたのだもの。悔いはないわ」
「お願いだ…そんな悲しい事言うなよ」
「わかるの、プロフェッショナルはね、常に自分の身体の状態を把握している物なのよ。こうなってしまっては、もう駄目ね。引退よ」
「うそだ……」
「車椅子の使い方は、えりかが教えて頂戴ね」
そう言うと千鳥は、不器用に笑って見せたのだ。私の目に流れているのは、雨では無かった。
その時、頭上から轟音が響き渡り、大地が崩れてきた。私たちは、そのまま生き埋めになってしまったのだ。



この学院には七不思議と呼ばれる怪異が伝えられている。七不思議と言っても、何故か四つほどしか判明していない。そのどれもが学院の生徒を攫うというモチーフに沿った伝承となっている。
判明していない七不思議はどんなものなのか。私は今身を以て体験している。
全身が土砂で覆われた時、私は死を覚悟した。千鳥もそうだっただろう。
だが私たちは土の中で生き続けている。しかも、生身の人間では無く、化石として。
あの土砂も、何かの怪異の一つだったのだろう。土に全身を覆われた私たちは、自分たちの身体が硬化していくのを感じた。それは比喩では無く、千鳥の真っ白な肌も、私の癖っ毛な黒髪も、全て赤茶けた化石へと変わっていたのだ。息苦しさも、冷たさも、感じない。ただ動けないだけ。化石像になった私たちが発掘されたら、学院の仲間たちはどんな顔をするだろう。
化石になった身体で意識を残して尚正気を保っていたのは、千鳥と手を繋いでいたからだ。
(聴こえる?えりか)
(ああ、聴こえるぜ。相棒)
(私達化石になってしまったのね)
(そうみたいだな。全く、とんでもない話だよ)
(発掘されたら、私とえりかは随分仲の良い彫像に見えるのでしょうね)
(そりゃあそうさ。石になっても、こうしてずっと話していられるんだからな)
(手を繋いでいて良かったわ。これって、もしかしてずっと、永遠にえりかと一緒にいられるって事なんじゃないかしら)
(恥ずかしい事言うなよ。でも、そう考えれば、意外と悪くないのかもしれないな)
(そうよ。私達いつか遠い日に、もしかしたら学院が無くなったあとかも知れないけれど、きっと発掘されてどこかの博物館に飾られるわ。親愛の少女たち、みたいな題名を付けられて)
(そいつは愉快な想像だな。でも、悪くない)
そう、悪くない。身体が化石になってしまったこの状況においても、千鳥と云うアミティエと一緒なら、悪くない。心からそう思ったのだ。
(私、ちょっと疲れちゃった。少し眠ってもいい?)
(ああ、おやすみ千鳥)
流石に化石から寝息は聴こえなかった。えりかと千鳥の繋いだ手は決して離れる事は無い。化石として一体化した二人の心は、これからも永遠に繋がっている。
(私も流石に疲れたよ。少し、眠ろう……)

やがてえりかの意識も眠りに落ちた。八重垣えりかと考崎千鳥、心を通わせた二人の美しい少女はこうして崩れ落ちた土の奥深くで本物の化石になったのだ。
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葛

Author:葛
石化や凍結等を扱った固めSSを書いて投稿しています。
月姫リメイクとFLOWERS秋篇が今の生きる希望です。
琥珀さんとエイラ・イルマタル・ユーティライネンを石化する事にかけては誰にも負けません。

固め以外にもアニメとゲームと映画とクラシックなどが好きです。
装甲悪鬼村正 二〇〇九年一〇月三〇日、喜劇の幕が上がる。
折角だから装甲悪鬼村正をやりましょう。

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