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西海岸の墓石

こんにちは。オリジナル固めSSの新作です。

マフィアのボスが拾った美少女を自分の死後墓石にして飾る話です。

直接は関係ありませんが、ツタヤでこの夏からレンタル開始になったイタリアのドラマ、コルレオーネ。面白いです。

CORLEONE(コルレオーネ) DVD-BOXCORLEONE(コルレオーネ) DVD-BOX
(2009/08/25)
サルヴァトーレ・“トト”・リーナ:クラウディオ・ジョエ、ビアージョ・スキロ:ダニエレ・リオッティ 他

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ゴッドファーザーとか、マフィア物の映画、かなり好きです。

続きから読めます。





フランクリンは病の床に臥せていた。この50年、西海岸の裏社会全域を牛耳り、政敵全てを闇に葬ってきた男も寄る年波には勝てなかった。75歳。まだまだ現役を続けても良いと思っていたが、昨年の冬からの急激な体調の悪化は著しく再び現場に舞い戻る事は不可能だった。
「儂は、あと何か月なんだ」
「……」
「君の立場は理解しているつもりだ。どの様な結果が伝えられようと決して君に害が及ぶことは無い事を約束しよう……長くない事は解っている。判ってくれ、死ぬのにも準備が要る。せめてその時が来るまでの時間を教えてほしい」
彼には子供がいなかった。『身内』の数は多くとも、真に家族と言えるのは5年前に引き取った少女、ルーシーだけだろう。
「長くて3か月と言った所です」
「そうか、よく教えてくれた」
「心中お察しします」
「もう良い。下がってくれ……ルーシーの顔が見たい。二人っきりにしてくれないか」
フランクリンは主治医を下がらせると、最愛の『孫娘』を自室に呼び寄せた。


ルーシーは5年前、フランクリンが中東を視察中に路地裏で出会った浮浪児だった。漆黒の髪に琥珀の様に輝くメラニン色素の多い肌、碧く透き通った瞳。布きれ一枚を纏った汚らしい格好だったが、一際美しく輝ける真珠の原石だった。フランクリンは親の無い彼女を一目見て惚れ込み、ルーシーと名付け自分の『孫娘』として西海岸に連れ帰った。
あれから5年、14歳になったルーシーは誰もが振り返る絶世の美少女へと成長していた。
「お呼びですか、おじい様」
「ルーシー、近くに来てくれ。お前の眼が見たい」
「はい」
ルーシーは聡明だった。異国の言葉も多くを理解できるようになったし、時々発音がたどたどしくはなるが同世代の子供より遥かに機知にとんだ言葉すら喋る事ができる。
「綺麗だ……本当に宝石の様な瞳をしているよ」
「おじい様ったら。私の顔が見たければ、ずっとお傍に付いておりますのに」
「……本当に嬉しいよ。お前はいつまでもこの私と一緒に居てくれるか」
「ええ。おじい様がいなければ、私はただのよそ者の孤児です。もしあの路地裏で見つけて下さらなかったら、とっくに路地裏でのたれ死んでいたでしょう」
「もし、私が死んでしまったら、どうする」
「ひどい事をお聴きなさるのね。私が周りからどう見られているか、薄々は解っているつもりです。おじい様が居なくなれば、この西海岸も私には針のむしろの地獄に感じる事でしょう。私はおじい様に一生を捧げる覚悟で生きています」
ルーシーはフランクリンに告げると、紅いワンピースの裾をつまんでお辞儀をした。
「そうか……ありがとう。嬉しいよ」
そう言うと、フランクリンは再び眠りに就いた。ルーシーはその手を朝が来るまで握り続けていた。

一カ月後、フランクリンは死んだ。


地平線まで見渡せそうなほどの長蛇の黒服の列。各界の実力者が一堂に会し、フランクリンの葬列に加わった。しかし、その中にルーシーの姿は無かった。
ルーシーが居たのは真っ暗な壁に包まれた地下室だった。今朝、喪服に着替えたルーシーは後ろから何者かに薬を嗅がされ昏倒し、気が付けばこのごつごつした石壁の牢獄に倒れていた。天上からはスピーカーがあると思しき雑音が聴こえ、見慣れた監視カメラの赤いランプが点灯しているのが見える。
「こんな事をしたのは誰?私はおじい様の葬儀に参加しなくてはならないの、今解放してくれれば今回の事は水に流すわ。早くこの薄暗い空間から出して頂戴!」
聴こえている事は分かっている。ルーシーは監視カメラに向かってその鈴の音の様な声で叫んだ。
《ルーシー、君は頭が良い。この状況でどのように振る舞おうと絶対的に不利な立場にいる事は分かっている筈だ》
スピーカーから返事が聴こえてきた。
「そうね。でも、いくらおじい様が亡くなったからと言って、すぐに私を処分できる物でも無いはずだわ」
《そこまで頭が回る子は初めてだよ。どこの馬の骨とも分からぬ子が。これはとんだ宝石だったようだな》
「何を言ってるの?」
スピーカーから漏れ聞こえる内容の不穏さに感づかぬルーシーでは無かった。
《君をここに閉じ込めたのはな。『ルーシー』。君の大好きなおじい様の命令だよ》
「おじい様が…まさか」
《君はおじい様の為に一生を捧げると言ったそうじゃないか。彼は大層喜んでいたよ。そして遺言を残した。自分が死んだら、ルーシーを墓石にして自分の墓の上に飾ってくれ、とな》
墓石にして?飾る?話が今の状況から飛躍し過ぎて理解が追い付かない。
「一生を捧げるとは、言ったけど…あれはおじい様が喜んでくれると思って!」
《そう言えば、遺産のほんの一部でも自分に分けて貰えて、安全に隠居生活を送れるとでも思ったか?これだから下賤の娘は!…現実を見せてやろう。お前の先代の『お気に入りたち』の姿だ!》
真っ暗だった牢獄に明かりが灯され、周囲の様子が見える様になった。
「あ。あ。あ」
ルーシーの踏みしめる足下には、美しい少女の顔があった。背中にも、顔が、尻が、躰が。この牢獄は、四方八方が、石化された少女が敷き詰められてできていた。
「いやぁああああ!!!!」
皆、ルーシーと同じくらいの年齢をしている様に見える。とても美しい。しかしルーシーは分かってしまった。その意味を。
《あの爺さんは見ず知らずのガキを拾って育てるのが趣味だったよ。拘りがあるのか、興味が無くなるのかは知らないが、拾ってきた娘が14歳になると決まって石にして庭に飾ってた。今お前が踏んづけてる娘なんかは50年前から石になってるから本当ならとっくに婆さんになっててもおかしくない。そのうち石像も溜まりすぎてきてな、処分に困ってとうとう自分の棺桶を娘たちで作りやがった。お前は幸運だよ。身体を削られないで残してもらえるんだからな》
「ぅ……ぁ……こんな……ぉぇぇ………」
ルーシーは恐怖のあまり嗚咽を洩らしながら失禁していた。崩れ落ちそうになるルーシーの体を、部屋に充満してきた石化ガスが静止させる。
《フランクリン様永遠に、ってな。幸せな夢は見れたかい、ルーシー》
スピーカーもまた石化し、通信が切れる。再び闇に閉ざされた石室の中に、全身を灰色に変えた絶世の美少女の墓石が誕生した。


『誰よりも西海岸を愛し、尽くした男。フランクリン=ピエトロ=コルンここに眠る。享年75』
ルーシーで造られた墓石には、頭の先から足の指まで、フランクリンの生前の偉業がびっしりと彫り込まれていた。手を結んで懇願する様に恐怖し泣いていたルーシーの最期の姿は、フランクリンの死を悼むかの様に美しく西海岸の夕日を浴びて立っていた。
彼女を知らない者は、この墓石を何よりも優れた芸術品として感嘆する。
彼女を知る者は、フランクリンを畏怖し、再びその墓前に平伏す。
後に文化遺産として永遠に人々に語り続ける偉大な男の墓は、彼の栄光の象徴であり、また終焉の証だった。
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葛

Author:葛
石化や凍結等を扱った固めSSを書いて投稿しています。
月姫リメイクとFLOWERS秋篇が今の生きる希望です。
琥珀さんとエイラ・イルマタル・ユーティライネンを石化する事にかけては誰にも負けません。

固め以外にもアニメとゲームと映画とクラシックなどが好きです。
装甲悪鬼村正 二〇〇九年一〇月三〇日、喜劇の幕が上がる。
折角だから装甲悪鬼村正をやりましょう。

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